高齢社会に最適の乗り物としてのLRT

 地下鉄やモノレールを利用されないとしても、それには高齢者の移動範囲が限られているからという事実があるからかもしれません。

 レジメの資料をご覧頂きますと4ページ目にそれらしい資料を集めてみました。図1は運転免許を持たない人の比率を年齢層別に示したものです。普通は免許を持つ人の比率を出すものなのですが、私は持たない人の比率を示してみたんです。免許が持てない15歳までは100%免許を持っていませんが、高校生の年齢層の16ー19歳では男性で63%、女性で79%が免許を持っていません。20歳代になりますと免許を持っていない人はがくっと減りまして、男性12%、女性23%に過ぎません。だからかなりの人が免許を持っていることがわかるわけです。高齢者といわれる65歳ー69歳でも男性は免許を持っていない人は25%に過ぎませんが、女性は83%が持っていないわけです。男性では4人に1人に過ぎませんが、女性は5人に4人は持っていないのです。70歳前半になりますと男性では3分の一は持っていませんし、女性は92%持っていません。75歳以上になりますと65%の男性が持たず、99%の女性が持っていないという風に、車とは無縁の人たちが圧倒的に多くなるのです。

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図1..運転免許を持たない人の比率
(平成9年度末)

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図2.高齢者の移動目的ベスト12
(負傷者の目的別データから)

 図2にはその高齢者の移動目的のベスト12をあげてみましたが、買物が29.3%、訪問が23.1%とこのふたつが圧倒的に多いのです。それからかなり離れて通院7.1%、散歩4.5%となります。これは事故で負傷した人の目的別データですが、NHKの生活時間調査から見てもほとんど変わりなかったように記憶しています。

 このように高齢者は買物にでられる、訪問にでられることが多いわけですが、私は高齢者の安全の問題を研究していて、高齢者の生きがいのひとつは人に出会うということだと感じるのです。買物にいくというのはただ単に買物をするだけではなくて、そこへ行くまでの間に知り合いに出会ったり、行った先で買物の時に人と接するのが楽しみなのです。 生活の質ということをいいましたが、その生活の質のひとつにはこのように人に出会うということがありますね。訪問も知人だけではなく、自分の子ども、孫たちを訪問する。これも人と人との接点を求めているわけです。通院ももちろん病気ではありますが、そこで人と出会うのが楽しみという要素を含んでいるのです。

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図3.歩行者中負傷者の自宅からの距離別にみた
日常行動半径値(中央値)

 いずれにしましても、こういう形で高齢者の方が外出いたしますが、いったいどのくらいの距離を移動するかを、これも図3に示したように自宅からどのくらいの距離で負傷したかというデータから推定してみました。これは年齢層と非常に関連していまして、10歳代後半、20歳代、30歳代、40歳代は2000m以上のところで多くなっていますが、85歳以上などは250mのところ、自宅から本当に近いところで負傷していますが、65歳から69歳までの年齢でも600m程度です。高齢者の方々は比較的行動半径が狭いところで行動しながら日常生活をやっておられるわけですが、そういう人たちの足としての交通機関はどうあるべきかということを考える必要があるのです。

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