「堺市における東西鉄軌道へのLRT導入構想について」

堺市鉄軌道企画担当部長 森田 祥夫 氏

平成16年5月23日ラポールひらかたにて

ただ今ご紹介いただきました、堺市の鉄軌道企画担当部長をさせていただいております森田でございます。今日は、私とそれから副理事の金田でございます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

今日は、枚方LRT推進会の皆様方に、少しでも今私共が考えている鉄軌道を御理解いただきながら、枚方さんにも、同じようにLRTを中心とした公共交通の、一助となればということで、私共のPRも兼ねまして、喜んで寄せて頂いたということでございます。

今、ご紹介いただきましたけれども、私、堺市役所に昭和49(1974)年に入りまして、今年でちょうど丸30年勤めたことになります。まあ、1時間程度ではございますが、少しでも堺の事情と、それからLRTの現状を御理解いただければと思っておるところでございます。昭和49年に入りましてから主に財政畑17年、財政課長3年を経まして、現在に至っております。私、金の面から考えますと、鉄道というのは金食い虫であると考えております。はっきり申し上げて、採算性の問題とか、色んなところで成り立たないのではないかということで、堺市の中でも、慎重派といえば聞こえが良いのですが、むしろ反対に廻っており、色んな強硬な意見を持っていたものでございます。人事の妙というのはわかりませんで、2003年4月に人事異動がございまして、それを推進するほうの辞令をいただきまして、今は、何とかお金が一番少なくてすむように、そして経営として成り立つ方法を国、府、あるいは関係機関と一緒になって考えさせていただいているというところでございます。

それから金田でございますが、金田は5年位前に、後で御紹介させていただきますが、ヨーロッパ、フランスを中心に視察も行ってまいりましたし、“技術士”ということで、堺市の知恵袋でございます。今日、2人でよせていただきましたので、つたない話になるかもわかりませんが、ひとつお聴きいただきまして、枚方LRT推進会さんの前向きな姿勢の一助にでもなればと思っている次第でございます。話をさせていただく東西鉄軌道でありますが、実は今日長山先生からもお話ございましたように、阪堺線の活性化ということも含めまして、お話をさせていただけたらと思っております。

「堺市の概要」

堺市はどんな街かというのを少しお話しさせていただきながら、それが今東西鉄軌道の敷設に向けて、どのように進んでいるかという話をさせていただければと思っております。

スクリーンを見ていただきますと、始めのところの絵でございますが、これは“フェニックス”という鳥でございます。フェニックスというのはご承知かと思いますが、不死鳥ということで、架空の鳥ではございますが、蘇る鳥ということで、堺市のシンボルとも言えるものです。堺市の中に国道310号線が、「フェニックス通り」ということで、フェニックスという木を、50メートル道路に植えている所があります。

堺市は、市制を施行したのは明治22(1889)年でございます。全国で31市と共に初めて市制を施行しました。枚方市は確か昭和22(1947)年ということでおききしておりますが、ちょうど人口も、それから面積もですね、堺市の人口が大体79万で、枚方市のちょうど面積も人口も2倍ぐらいの市でございます。この堺市でございますが、合併で大きくなりました。2005年2月1日、南河内郡美原町と合併の予定です。合併後、早期に堺市が政令指定都市になれるように思っているところでございます。

そのような市でございますが、堺市は古い歴史を持っておりまして、もちろん枚方市もおありだと思いますが、“堺音頭”というのが実はございます。ここで歌わせてもらってもいいのですが、『♪ものの始まり、何でも堺。三味も小唄もみな堺』というのがございます。三味線、小唄、茶道 わび茶でございますが、それの発祥の地が堺、それから、民間航空が、堺の大浜から白浜へ飛んだという進取の気持ちと何でもやろうというような商人の心意気があったということであります。堺市の名産品は線香でございますとか、種子島から鉄砲が入りましたが、その技術を生かして生まれたのが自転車であります。それから、昆布ですが、松前船によって、北海道から、昆布を持って帰りまして、それを加工したものであります。さらに堺では包丁ということもよく御存知かと思いますが、包丁はタバコの葉をきざむところから発達し、非常にきれの良いものが必要であったということから始まりまして、お寿司屋さんや料理屋さんなどでお使いになっておられる職人向けと言われております。

このような堺市ではございますが、歴史的に見ますと、古い歴史を持っております。特に仁徳天皇陵をはじめ百舌鳥古墳群などがございます。

堺は大きな被害を3回うけております。応仁の乱というのは、皆さんよく御存知だとおもいますが、そのちょっと前にですね、“応永の乱”(1399年)で大火がございました。それがまず1回目でございます。2回目は、これ皆さん御存知の“大坂夏の陣”(1615年)で、大火にあいました。もう一つは、これも直近でございますが、直近といいましても、60年ぐらい経ちますが、昭和20(1945)年、太平洋戦争の最終のころ、7月の大空襲で市街地の大部分が焼失いたしました。

これらの大きな被害を超えて、フェニックスのように復活しなければという事で、昭和30年代の半ばくらいから、国の政策とも相俟って、堺泉北臨海工業地帯に重厚産業を誘致いたしました。また、そこで働く人々にどこで住んで頂くかということで考えましたのが「泉北ニュータウン」でございます。当初、20万人を目標にしておりましたが、今では、16万〜17万人位の人口規模でございます。

「歴史の道(五街道)と鉄道の現況」

堺市は、古くから交通の要衝として発達をしたといわれており、五街道が通っておりました。日本で最初の官道、今でいいますと国道にあたるのでしょうか、堺と奈良を結ぶ竹内街道がありました。熊野詣に参ります熊野街道、これは小栗街道ともいわれております。高野山へ行きます西高野街道。長尾街道といいまして奈良の方まで連なっている街道がございます。更に紀州の殿様が参勤交代にお使いになったといわれております紀州街道がございます。

堺市は、大和川一つ隔てまして大阪市の真南に位置しております。特に大阪市さんの後背地、ベットタウン化しているところもございます。現在の交通としましては南北に発達をしております。古くは、奈良の都との結節があったのですが、今は、大阪市との繋がりが強いというのでしょうか。

堺市は交通の要衝と申しましたが、鉄道を考えてみますと堺市内には6つの鉄道が通っているわけで御座います。北からいいますと、南海電鉄の南海本線、阪堺線、高野線、JRの阪和線、更に新しいニュウタウンが出来ておりますので、これを結ぶために泉北高速鉄道、もう1つ大阪市の地下鉄1号線、要するに御堂筋線の延伸が、南海高野線と結節しております。中百舌鳥というところまで結んでおります。すべて南北に通っております。これは古くからの大阪市さんとの繋がりがあったから南北に通っているわけであります。

「東西方向の鉄軌道整備が長年の課題」

このような状況の中で、何とか、堺市の東に位置しております松原市・羽曳野市さんと結節が出来ないものかという思いが古くから根強く残っており、そのために、東西の結節強化をはかる必要があります。

先ほど申し上げましたが、私は平成15年にこの鉄軌道部門に配属になりました。私で、7代目になっており、それまでは全て、大阪府の技術系職員の方をお招きいたしまして鉄道の事を研究なり推進をして頂いておりました。今回、事務系ではじめて、この今のポストにならせて頂きまして、堺市もいよいよ本格的に金の面も含めてあるいは地元の対策も含めて東西の鉄軌道計画を進めて行こうというように思っているところでございます。
堺の鉄軌道でございますが、近鉄は、南大阪線と結節をしたいということでお考えになっておりました。大正9年に堺と羽曳野市の古市との間を通すという免許を持っておりました。これは平成3年までは近鉄が堺に東西鉄道をひくという免許を有していたという意味でございます。もう1つが、南海でございますが、堺の大浜と八尾市をつなごうという計画で昭和36年にこの免許を取得しました。昭和48年にこの免許を取り下げられました。いずれにしましても需要とか採算とかがなかなか上手く行かなかった結果じゃないかと思っております。しかしながら、堺市としましては、古くから東西を結ばないと堺の発展は無いと考え、道路だけでなく、鉄道での交通を考える必要があると思っておりました。

道路と鉄道とでは、大きな差がございまして、やはり、鉄道がないと、まちの発展とか、結節、容量にしましてもちがうんじゃないか。という思いがございました。

「堺市における鉄軌道整備のあり方について」提言

平成2年に「堺市公共交通懇話会」を立ち上げたわけでございます。今はもうお亡くなりになりましたが、大阪市立大学の名誉教授で阪南大学の学長もしておられた川島先生を座長に、京都大学の天野先生、神戸大学の秋山先生など、学識経験者にお願いしたわけでございます。平成6年にご提言をいただきました。この時に頂いた提言が後でも出てまいりますが、それを基礎に致しまして、今回の提言を頂いたということでございます。まず、ルートからいいますと、JR堺市駅、南海高野線の堺東駅、南海本線の堺駅との3つの駅と更に臨海部・これらを結節しながら更にJR堺市駅から、JRを超えまして東の方までのことを考えられました。これらを結節することは必要であるとの提言を頂きました。この時には、どんな鉄道で考えたのかと申し上げますが、LRTではなかったんです。その時に中心に考えておりましたのは、地下鉄、ミニ地下鉄あるいは新交通あるいはモノレールを中心にご検討頂いたということでございます。

「LRTの調査開始」

ところが、バブルも崩壊して地下鉄ですと、相当なお金がかかる。先ほどの臨海部からもって来るとしましても何と2千億というお金がかかる。このようなことではとてもじゃないですけれども、経済も沈下して税収入も逼迫しております中では、なかなか出来ないという状況の中で、丁度、平成11年にLRTという調査をさして頂きました。フランス、ドイツ等におきまして1980年頃から新設され始めた鉄道でございます。それは何かといいますと、路面を走っている鉄道であります。堺市民は、東西鉄道に賛成だといいながらも、思いとしては、地下鉄なり、モノレールなりのイメージが強かったわけであります。ところが、LRTですと環境にもやさしい、後でふれさして頂きますが、LRTの特性というのを勉強すればするほど、これは交通手段の1つとして、なにより、優秀である。しかも、ミニ地下鉄、モノレールに決して負けない。しかも路面を走っている事から上下移動がない。ということから、LRTを中心に今回考えて行こうじゃないかと立ち上げたのが平成15年の「堺市公共交通懇話会」であります。天野先生、川島先生方は、ご高齢ということもあり、その先生方のご推薦で京都大学の青山先生を座長に致しまして、神戸大学の庄司先生とか、大阪産業大学の塚本先生、大阪府立大学の宮本先生(経済学部長)、その方々を中心に再編成をいたしました。

「東西鉄軌道の実現に向けて」提言

平成6年に頂きました「あり方」のご提言を元にいたしまして、機種をミニ地下鉄、新交通システムではないLRT(路面を走る次世代型の交通手段)に絞りまして、東西に鉄道を通すときにはどのような障害があるのか、という観点からご提言を頂きました。これが、平成16年1月26日にご提言を頂いた「東西鉄軌道の実現に向けて」という提言であります。内容につきましては皆さん方のお手元にお配りしております。これは答申というものではございません。諮問答申といいますのは、通常、役人・行政が事業を進めるにあたりましていろんな方のサジェスションを頂く時の公的なやり方である訳でありますが、そういう手続じゃなくて、研究して頂いた成果を堺市が今後、実際、実現するための基本とさせて頂きくというものであります。

この提言の中では、主な柱は5つございまして、中身にふれていきたいと思っております。

「東西鉄軌道へのLRTの導入効果」

まず、LRTが如何にすぐれた乗り物であるかということでございます。これは先ほどからも出ておりましたけれども、人にやさしい、環境にやさしいとか、上下移動がない、要するに平行移動ということであります。

また、車両が低床式ということであります。車両から歩いている人の姿も見えるわけで御座います。地下鉄ですと、景色も何も見えない。こちらからも相手からも見えない。LRTは、すぐれた乗り物であるということが、まず、一点目であります。

 ヨーロッパの例では御座いますが、まちの中にLRTが通っているという事がまちのシンボルになるのではないかと。ランドマークにでもなればいいなぁと思っております。

それともう1つは、中量輸送機関の中では、建設費が最も安く済むことから、LRTは非常に宜しいという事でご提言を頂いたわけで御座います。中量輸送機関は、LRTを含めましてミニ地下鉄、モノレール、新交通皆まとめて中量の輸送手段といわれております。

LRTの特性について、なかなか証明が難しいのであります。日本の中で、LRVという車両があります。例えば、広島電鉄のグリーンムーバーや、岡山の「モモ」、伊予電鉄、土佐電鉄、熊本などで走っているのは、すべてLRVなんです。LRTは日本では今のところありません。海外にしかLRTはまだないのです。日本にあれば、そこの市がどのように変ったとか、LRTを導入する事でどうなったとかいえるんですが、LRTが日本では無いものですから、外国へその例を求めに行きました。その1つの例がたまたまフランスのストラスブールであります。ナント、フライブルク等の例も見ております。これらは外国の例ですので、日本でいけるかどうかです。例えば、ストラスブールの写真でよく出ていますトランジットモールの形式をとっているところがある訳であります。まさに自動車交通を遮断して鉄道と人が一体となる。日本でこんな事が成り立つのかどうかです。フランス、特にヨーロッパの人々の交通に対する考え方とか、欧米の人々と日本人とで安全に対する考え方がちがうかもしれません。まちに対するあるいは公共ということに対する思いが違うかもしれません。ここで議論したのは、外国の例しかなかった。よく言われるのは、こんなところでやっているのは外国人、日本人でない。日本でこんなこと出来るか?という事なんです。最終的には、公共交通機関と人とが一体となって、しかも今在りますような自動車交通というものを出来るだけ遠慮頂いて、公共交通機関である鉄道を中心にまちづくりを進めていきたいという思いが一番、最終のあたりにあるんじゃないかと。そういうような良さが1つLRTの特性といえると思います。

「導入ルート・構造・導入位置」

もう1つは、導入ルートとか位置とか構造ですが、出来るだけ平面を走るようにしなさい。高架で行きますと何が困るかといいますと、高架で行きますと「ピア」、支える柱が立ちます。そうするとまちが分断されるのではないかと。せっかくまちの中を一体化するという中でそういう支える柱が立つということへの疑問。平面を走らせて頂くのは有難いのですが、特に枚方さんなんか、こんなところ、平面走らすと、どのようになるかといいますと、今ある、固い建物潰すという話になります。そうすると、平面を走らすには道路しかないわけです。道路を中心にやる。これがまず1点。

道路上における導入の位置でありますが、方法に3つあります。1つは道路の端に寄せる。2つ目が道路のそれぞれの両側に走らせる。3つ目が道路の真中を走らせる。日本でも外国でも殆どこれです。通常多いのは、真中に電車が通っていて両側に道路がある。こういう位置になっているわけであります。外国の例として結構あるんです。しかし1番良いのが歩道側への両寄せであります。人々に一番近いところにある乗り物になる。非常にいい提言を頂きましたが、こんな例は日本では御座いませんし、外国でも極めて少ない事例であります。これを我々が実現すれば極めてすばらしい交通機関となるであろうと思います。

もう1つ御座います。臨海の地域とこれらの交通結節点を結びながらと申し上げました。

国の法律によって定められた都市再生緊急整備地域が、大阪府下12ヶ所あります。そのうち堺では3ヶ所ご指定を頂きました。1:臨海地域、2:鳳地域、3:堺東地域丁度、臨海地域と堺東地域を結ぶ計画となっております。これらの地域の開発を支援するためにLRTを導入する。緊急整備地域のまちの活性化が狙いと言えます。ここの臨海地域は今は何もない野原です。この緊急整備地域の地域指定を受けまして10年で民間活力による整備を行おうとしております。

次に1番議論があるのが、都心地域のルートであります。導入可能なルートを3ルート考えたわけです。1本目のルートが、中央環状線上のルートで八尾市を通って北のほうへ行っているルートであります。2本目のルートは、大和高田線で、結節が上手く行きましたら近鉄の南大阪線まで行ってしまいます。3本目のルートは真中のルートで御座いまして、堺市のシンボルロード・メインロードになっているわけでですが、そこを通そうと。実は、3ルートの考え方、ルートも、構造も必要性も全て広報「さかい」で公表して、市民の方々にご意見を求めました。懇話会は7回開きまして、その上で市民の意見を求めました。市民の意見は、我々の予想に反しました。東西鉄道ならば堺の西の端から東の端まで通せるような中央環状線ルートをという意見が3分の1。大和高田線ルートをという意見が3分の1。大小路ルートが3分の1に分かれました。

 

今我々が計画しているのが約8キロメートルであります。行政でありますとパブリックコメントということですが、公共交通懇話会からの意見募集ということでありますので、関連沿線の校区(小学校区単位で設定)全部で、9つあったんですが、そこの代表者の方、商業団体、更に、沿線地域でまちづくりを実践している団体、そういう方に市民の意見を聞く前に直接、懇話会の先生方に意見を述べていただく機会を設けました。それが終わりましてから、市民から意見を求めたところであります。80いくつかのご意見を賜りました。ここで2つの問題点が浮き上がった訳でございます。

1つは高野線堺東駅からJR堺市駅までをどのように結べるかということであります。高野線は平面走行しており、LRTがどのように高野線を越えるかという問題であります。

もう1つは、まちづくりと活性化の問題。本当にLRTを通すことによって活性化するのか、人がやって来て賑やかになるのか、回遊性を持たせることができるというが、それを証明してくれと言われました。委員の府立大学の宮本先生は経済の専門の先生ですので、鉄道のルート別に経済効果の算出をお願いいたしましたが、鉄道があるのと無いのとの比較の経済効果は出せるし、広い地域では出せるが、近接ルートではどこを通っても経済効果は同等であると言われました。そうしますと、堺市でどこを通すのが一番良いル−トかを決定しないといけません。

市が決定するということは、逆に言うと市民のご意見を十分聞かなければいけない。そうすると、どこを通すにしても市としてのまちづくりをどうするか。我々今までは行政がまちづくりを提案する中で、みなさんどうですか。というようなことで進めてきました。本来は市民のみなさん方から、こういうまちづくりをすべきではないか、自分たちのまちはこうなって行くんだよという提案いただくことが重要であると考えております。

そこで、仮称でございますがLRT推進協議会のようなものを立ち上げようとしております。これは、ちょうど美原町と合併をする時に合併協議会をつくり、各種団体に入っていただいてまとまりました。私どもも東西鉄軌道というのは非常に大きなプロジェクトでございます。これをやるためには、意見のぶつけ合いが必要ではないかと、考えております。

「事業化に向けた今後の課題と方向性」

今後の課題ということでありますが、近畿地方交通審議会というところで今、堺市の鉄道を2つ提案しております。先ほど申し上げました東西のLRT構想を出しております。もうひとつは、地下鉄の3号線の延伸線です。これは需要からしまして非常に厳しいと言われております。平成元年にあった運輸政策審議会で、熟度の点からノミネートはできませんでした。15年に1回の割合でしか開かれなかった審議会ですので、そうすると今年逃したら15年間は事業着手できないと、堺市はがんばっています。阪神の西大阪線は平成元年の答申でいただいた分が、今ようやく去年ぐらいから工事を始めました。しかし、今回の答申ではLRTというのは、まちの特性を生かすことから、社会経済状況がめまぐるしく変化する世の中で通常の鉄道とは異なるので、地方独自でやっていただいたらいいんじゃないかというような、文言を入れていただけると聞いております。今年の秋に国が発表されるということで、私ども心待ちにしながら、お待ちしています。

もうひとつ大きなことは、地元なんですね。どこを通るか、鉄道なんて昔は秘密会でやっていたと、聞いておりました。我々は、政策を決める過程については公開にはできないという言い方をずっとしてまいりましたが、このごろどうも具合悪くなりまして、堺市の懇話会を7回行いましたが、すべて公開でございます。委員発言も全部残っております。ということからすれば、地元のご意見を利害関係だけで済ますというようなことはこれからできない、そのまちが本当に良くなるために多くの意見を聞かなきゃいかんということになるんじゃないか。これがひとつの一番大きなことです。そのためにも堺市が考えておりますのが、仮称ではございますがLRT推進協議会、これを市全体で立ち上げな、いかんのじゃないかと考えているところであります。

「事業手法と事業主体」

もうひとつは、事業手法の検討と事業主体でございます。どんなところがどの仕組みでやって、どこがやるんだ。これが一番大きなところだと思います。今までのやり方は大部分が第三セクター方式です。または、市が交通局を持って行うかでした。今から市が交通局を作るというのは、できない状況です。そうすると、PFI事業などが考えられるのですが、鉄道事業はもともとPFIの最たるものです。自分らで作って、民間自身で使っている、PFI事業の最たるものです。今は、それだけでは成り立たんようになったから、公共が手を出すようになった。公共がやったら金がいるから、民間にさらに委ねられないか?一部でも良いからというようなことを考えながらの事業手法ですね。これは、上下分離方式。阪神の西大阪線、中之島新線なんかもこれでやっておられるようですけれども、今は線路から下はある程度公共でみて、上は要するに民間事業者・第三セクターも含めてですけど、やっていただいたらどうですか。それによって、どんな事業主体ができるのが可能なのか。はっきり申し上げて運賃だけで運営だけやって下さいと言えば、手を挙げてくれる会社があるかも知れません。そのかわり、設備投資あるいはそれにともなう償却すべて、公共が見ますと言えば十分成り立ちます。今第三セクターが困っているのは、償却で困っているんですね。運賃で儲けても、どんどん償却資産で取られていきます。事業が何とか成り立つものを作らなきゃいけない。

もうひとつは重要なことは、既存の交通事業者、何かと言うとバス事業者です。今、公共交通として、バスが通っているのです。その道路へ鉄道を新設していこうというのは、非常に摩擦が大きい。

金沢市や奈良市は調整に難航されたと聞いています。宇都宮市、東京江東区。京都市もがんばっておられる。枚方市もこういうふうな状態。

もうひとつは、警察との調整が難しいことです。交通管理者は、事故起こったらだれが責任取るかということです。事故の可能性がゼロとは言えません。起こります。交通警察と仲良くしないと非常に難しいところがあります。
国が今LRTを通せるところは、堺と、富山の富山港線ですね。これは既設の鉄道をLRTにやりかえるようです。国には非常に力を入れていただきまして、今勉強会を開いております。もう3回やりました。以前のモノレール等調査費というのがございますが、今は街路交通調査費を3分の1補助で16年度実施いたしております。その後も続けて熟度を増して、平成19年度なり、20年度に施工認可を取るよう考えております。いずれにいたしましても、実際に通すようになりますと、地元それから今ある利害関係者がうんと言ってくれませんと、都市計画決定も行わねばならないところがございます。また、臨海部は臨港地区でありますので、港湾の関係もございます。ありとあらゆる手続きが出てまいります。私どもは軌道法で行こうと思っておりますが、一部鉄道法を使わないといけないとか、法律のしばりがございます。あるいは規制がございます。その中でできるだけ実現に向けて考えているというところでございます。いろんなところのお力もお借りしております。どうぞみなさん方のお力もお借りできればありがたいというところが、私どもの東西鉄軌道の話でございます。

「阪堺線の現状」

阪堺線の話でございますが、阪堺線と東西鉄軌道が、結ばれるところがございます。私どもこれが非常に厳しくなっておりますけれども、この東西を通すことによりまして、なんとか阪堺線の経営も、成り立つように考えることができないかと思っているところです。これはどういうことかと言いますと、阪堺線は、利用客が約6分の1に減ってきている。そして、毎年軌道事業としましては、4〜5千万円の赤字、これやったら大したことないんですが、阪堺線っていうの大阪と堺を結んでおり、そのうちの堺市分でだいたい3億円程度の赤字を生じているんだと。昨年は会社の経費を削減したが、それでも、2億ぐらいの赤字がある。そこで、堺市内路線を廃線したいと協議がありました。

また、阪堺線は平成15年度、国の緊急安全点検を受けました。何ヶ所かの改善箇所が出てまいりました。工事や補修をするお金がいるんですが、国は緊急に通常5分の1の補助制度ですが、3ヵ年にわたり5分の2にかさあげして実施していこうということです。

また、会社は赤字でずっときてるんで、この赤字を公的な支援でやってくれと言われているのが1点ございます。堺が支援しなければ、廃止申請を出す寸前だと言われました。だから経営を助けて下さい。

もう1点は、堺がどうしても阪堺線が必要であるならば、施設を買い取って下さい。運行は委託での運行なら受けてあげましょうと。その3点について非常に強気で言われました。私どもこれの対応に苦慮しているというところでございます。

近畿運輸局が阪堺線の管理監督をしているんですが、公共交通活性化プログラムを活用して、国、府、それから地元企業、鉄道会社が一体となって、再生に向けての仕組み作りができないかということについて、勉強会を開いていただけるようでございます。

先ほどの緊急安全点検に基づく補修について、今回、鉄道軌道近代化施設整備補助金として国が5分の2、大阪府0、堺市5分の3、鉄道会社が0という予算を16年度措置いたしました。

「堺のチンチン電車を愛する会」の設立

何とか阪堺線を残すという思いで、なんとか生かしていきたいという考えから、本日「愛する会」の宣伝もさせていただきます。現在でざっと5800口の市民の方から会員になっていただいています。一口3000円でございまして、阪堺電車に乗れる2800円相当の乗車券はお渡しする。そうすると、残りを事務費としまして、会報送ったり、連絡をするためのことをさしていただいてるということでございます。これが例えば1万口、うまくいきまして5万口入っていただきますと、ちょうど阪堺の一年の赤字とほぼ一緒になりますので、5万口を目指したんですが、現在5800口とまだまだ至らんなと思っております。どうぞみなさんこういう路面電車を残すため、ひとつご協力をいただきたく思います。

振込み用紙もつけております。ただ阪堺線には乗る機会はないといわれるのももっともでございます。実は私ども職員に申しましたら、当然奈良とかいろんな所に住んでいて、阪堺線なんか乗ったことないという方もございます。私もできるだけ乗るようにしております。阪堺線を多くの方に知っていただければと思います。サンケイ新聞には先週月曜日から5日間非常にありがたい記事を書いていただきました。その記者は今日からちょうどヨーロッパ、ストラスブルグの方へLRTを見に行っておりますので、またご一読いただければと思っております。

つたない話で長くなりましたが、これをもちまして堺のLRTの現状含めました東西鉄軌道の報告とさせていただきます。ありがとうございました。


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