枚方LRT研究会第4回総会     2001年5月20日

特別講演A 「路面電車とまちづくり」

熊本市交通事業管理者 市原敏郎氏

市原氏挨拶

市原でございます.少しでも皆さん方のLRTに対しての参考になればということで事例をもとに私はお話をさせていただきます.タイトルに「路面電車によるまちづくり」このようなものをいただいております.この内容といたしましては,なぜ熊本市にLRVを導入したのかLRT導入に対する考え方,公共交通機関での位置付け,それから市民がどう考えているのか,そしてタイトルにあります路面電車をどうまちづくりに生かすのか.このようなことをもとに熊本市でやっておりますことを実例を申し上げながらお話をさせていただきたいと思います.その前に熊本市の紹介を若干させていただきます.

重要文化財熊本城

熊本市は,加藤清正が作りました熊本城,これは画期的といっては大変語弊があるかもしれません,日本3大名城の1つこのようなことで我々は熊本城を誇りに思っております.この城を中心に熊本市は形成されております.熊本の地をはじめて人為的に色々と手を加えましたのが,この加藤清正公であります.堀でありますとか,石垣でありますとか大変ユニークな工事をしております.これが現在もなおきちんと残っております.逆にいえばこのまちが残っているということでまっすぐな道がございません.なかなかお城を攻めるのには大変,昔の武将は苦労をしたのではなかろうかと思います.西南の役で西郷隆盛から攻められまして落城し,天守閣は残念ながらコンクリートです.重要文化財としては,色々なやぐらがございますが,文化庁が重要文化財に指定しましたのがございます.皆さん方も1度この熊本城をごらんいただきますと幸いであります.

こういう関係で,大変身障者・体の不自由な方々,お年寄りにはなかなか行きにくいお城でありまして,これにコンクリートの歩道を作れとかエスカレーターを作れとかこのようなことを過去お話をいただきましたが,あくまで文化財でありますので,昔のまま保つのが我々の責任であろうということで市民の皆さん方に納得をしていただきながら現在に至っております.

熊本市の概要

現在の熊本市の人口でありますが,66万,政令指定都市を除きますと,堺市についで2番目でありますがつい先だって,埼玉市が出来上がりましたので,3番目になろうかと思います.中核都市に指定されております.面積が266km2町村合併をいたしました関係で,海岸線が倍以上になりました.ご存じの通り,雲仙をはさみました有明海がございます.その有明海と市内の市街地の間に金峰山と言う600mほどの山があり,有明海は遠浅でございます.気候もこの金峰山にはさまれる関係で,大変京都に似た気候で,夏は大変暑く,冬は大変寒い,こういう内陸性の気候であります.

交通網といたしましては九州の陸の大動脈であります鹿児島本線が,博多から鹿児島まで通っておりまして,その真ん中にありますのが熊本市であります.道路といたしましては,鹿児島,門司の国道3号線,大分,長崎を結ぶ57号線,これが熊本市で交差をいたしております.今日,ちょっと早めに本市の方へお邪魔をいたしまして市内をちょっと見させていただきました.大変類似点がございます.本市の方でも大変渋滞ばかりということで,なぜかといいますと国道が走っているからだと思います.我が熊本市でもまったくその通りでありまして環状線がありませんものですから全部市内を通過して鹿児島に行くという,大変交通状態が悪い都市であります.

東のほうには熊本空港がありまして,この飛行場が市内まで約50分の距離にございます.アクセスはバスか車であります.西側のほうに先ほど申し上げました有明海に面しまして熊本港があります.これが海の玄関口で長崎の島原とか天草,それから超高速カーフェリーなどが巡航しております.700tから5000t級の岸壁が現在ありまして,中国や韓国からのコンテナが巡航しております.

軌道としては私は今担当しております市電であります.しかし,JRも熊本電鉄も市街地へ直接タッチをしておりません.で,中心部へのアクセスは全て路面電車かバスであるのが現状であります.市の中心部は先ほど申し上げました熊本城のすぐ近所に交通センターがございます.この交通センター,バスターミナルがありますが,ここを中心とした放射状にバスの路線があります.ほとんどバスがこの中心に向かって運行しており,朝のラッシュ時,運行本数として1時間に200本というような状態になっております.これが大変混雑の原因であります.このようなものが大体熊本市内の位置関係であります.このような熊本都市圏の状況の中で今大変皆さん方に興味をもっていただいております市電でありますが,この役割と現状についてお話をさせていただきます.

熊本路面電車の歴史

ご存知かと思いますが,熊本市は日本で初めて低床電車LRVを走らせました.この電車は欧米では当たり前になっているようでございます.ユニバーサルデザイン,あるいはバリアフリーデザインの1つでありまして,この導入につきましては,平成12年度に策定をいたしました熊本市総合計画にうたっております.

皆さんご存知かと思いますが,路面電車が日本で走り始めましたのが明治28年京都においてでありますが,その後名古屋,川崎をはじめ各地に路面電車が開業しております.昭和7年,1932年には東京,大阪などの大都市を含め全国で67,都市交通の主役として活躍したようであります.我が熊本市におきましては大正13年8月1日にこの路面電車がスタートしております.大正13年8月1日,市民の期待を担って路面電車が開業いたしました.開業当初は,営業キロ数は2系統で6.9kmでありましたが,その後拡張に拡張を重ね最大路線網になりましたのが昭和34年,1959年で7系統で25.1kmになりました.当時は鉄軌道で市内のほとんどをカバーをいたしておりました.

乗客人数も昭和39年がピークでありますが,1日平均乗車人数11万6千人であります.しかし経営的には,30年代から40年代にかけて高度成長期で経費の高騰,それから自家用車の急激な増加による乗客の減少によって昭和33年から赤字経営が始まったわけであります.さらに皆さん方十分にご存知の通り,自家用車の伸びで,道路が渋滞をいたしまして一番の利点でありました定時性もなくなってきたということから,どんどん廃止の方向へ追い込まれたのが現状であります.赤字が大きくなる,お客さんが減る.いろいろな原因があったろうかと思いますが,そのような状態で当時の歴史をちょっと見て見ますと,交通事業審議会から昭和40年ごろにこの電車の廃止に向けての動きが始まりました.老朽化した施設の廃止,乗客の少なくなった路線を中心に廃止をしてまいりました.我が熊本市でも路面電車に変わるもの,代替交通機関としてモノレールの建設を考えました.しかし,路面電車と比べますと大変建設費がたこうございます.このようなことからそれじゃせっかくなので廃止をした路面電車を残そうではないか,このような動きになりそれが昭和54年であります.で,残されているのが現在の2路線12.1kmであります.現在この2路線で市電を運行いたしております.

路面電車活性化策

存続決定を行いました様々な路面電車の活性化策としては,輸送力の増強の1つとして,西鉄が使用しておりました連結車,中古車を購入いたしました.それから電車接近表示機の設置などをハード面では行っておりました.また,ソフト面の活性化として,軌道敷内を全部通行止めに公安委員会の方にしていただきまして,横断する意外には線路内に車を乗り入れることができなくしました.その他,運転間隔の短縮,またずして乗れる.電車としてそのようなことがお客さんには一番の魅力のようでございます.現在のところラッシュ時に2,3分ヘッドで走らせており,大変喜ばれております.それでもラッシュ時には満員になるというようなことであります.今後もこのヘッドをもっとつめられないかということで研究いたしております.その他に乗車券でありますが,電車バス共通の回数券,プリペイドカードを採用しました.もう私鉄であろうが電車であろうが全部このプリペイドカードでどれにも乗れるということで,便利性としてはプラスになっております.
これらの活性化が功を奏しまして,減少を続けておりました乗客数が平成2年1990年からほぼ毎年わずかではありますが,増加を続け現在にいたっております.平成11年度1999年度の決算では,乗車人員としまして1086万8千人,1日に直しますと約2万9700人になりました.これは最低でありました平成元年度からしますと2割以上のお客さんの増になったわけであります.今まで申し上げた活性化策の他の方法といたしまして,市電の将来の構想の作成や今後の高齢,福祉社会に対応するにはどうしたらいいのかも検討をはじめました.その中で平成2年度から色々とこの研究会でもずいぶん研究を重ねられております欧米の路面電車いわゆるLRTと呼ばれるシステムの事例の研究をし,この電車が熊本市の将来の市電を担うであろうこのような考え方で,LRT化に熊本市電をしていこうと考えていたわけです.

欧米と日本の路面電車事情

欧米で導入されております高規格の路面電車LRTの典型的な姿を若干お話させていただきますと,路面電車が道路上の専用軌道をほとんど電子信号無く走り,停留所の間隔も300〜500mにされて,車両と電停との段差がまったくない車両は30m以上の長大車両で高性能で低騒音である,市街地への自家用車での乗り入れは規制されているが電車の終点はパークアンドライドの駐車場があり,バスとネットワークを組んで利用者の利便性を高めている.このようなことが欧米での事情ではなかろうかと思います.それに比べまして日本の路面電車は表定速度が低い,輸送量が小さい,停留所と車両の段差が大きいなどの点がございます.これらの欠点を改良したのが皆さん方十分ご存知のLRTでございます.これを熊本市にどのように導入するか,高齢社会に突入しておりますし,環境の問題もでてまいりました.

現在の熊本市長がヨーロッパに視察をしましたときに,ハイデルベルクと我が熊本市は姉妹都市でございますので,そちらにお邪魔したときにハイデルベルクでこのLRTを見て大変気に入ったようでございます.

熊本市の高齢者対策

現在,皆さんご存知のようにものすごいスピードで少子高齢化社会に突入しておりまして,熊本市もまったく例外ではございません.平成11年の10月1日現在熊本市におけます65歳以上の割合は15%を超えております.もうおそらく現在ではそれ以上になっていると思います.国連の定義では高齢者率が7%を超えますと高齢化社会,14%を超えますと高齢社会であります.この定義で見ますと熊本市でも完全なる高齢社会に突入しております.ますますこの率が上がっております.お年寄りが元気で長生きをされるということは大変いいことでございます.全国をちょっと調べてみますと沖縄は大変元気なお年よりが多いようでございます.熊本市の高齢者対策,元気老人対策のひとつに高齢者の方々ができるだけ家から出ていただく,つまり出ていただくということはそれだけ元気なことだということです.私がちょうど交通を担当します前は市民局長でしたがある日,市長室に呼び出されまして,「俺は高齢者対策の1つに70歳以上を無料で電車,バスを市内に限り全部無料パスで乗ってもらうようにしたい.と言う事で何とか民間バス会社も協力してくれるように説得しろ」とこういう命令を受けました.おかげで民間の皆さん方の協力を得て,現在その無料パスが実現しております.熊本市ではこれをサクラカードというふうに市長が名前を付けまして,お年寄りに大変喜んでいただいて利用していただいております.これは予算が年間6億でありまして,大変お金がかかります.これでもって病院にかかるお年寄りの医療費が下がればいいか,少しでもお年寄りが外に出て元気になっていただければいいかが1つの導入するポイントになりました.現在61億ぐらいの累積赤字であろうと思います.もう再来年ぐらいの予算を食うているような状態じゃないかなと思います.また路面電車はゆれが少なく路線がわかりやすいということで,現在昼間はお年寄りが大変多く,座席シートに座っておられる方の約8割はお年よりであります.その結果,小さな子供たちと一緒に電車やバスに乗って大変喜んでいるようでありますし,その経済効果は,お年よりは大変お金持ちでありまして,孫の手をひきながら,デパートやスーパーやと言う事で,小さな子供さんがおねだりをしてよく電車の中で買い物袋をいっぱい下げたお年寄りの姿を多く見かけるようになりました.そういう面からすると6億円で効果があったのかなと考えました.大変難しいこの6億という数字でありますが,そういうことからすると,現在のところはよしと言うことであろうかと思います.

低床車両開発の経緯

この路面電車は低床で皆さん方が乗りやすいということで,やはり停留所を上げるというよりも電車の床を下げることがよりいいであろうという結論から,いろいろ工夫をはじめたのであります.LRTの導入もこのような判断において実施しております.平成2年,低床電車の客室全車の70%が低床である車両を用いて,これはフランスのグルノーブルの車両が群をぬいておりました.しかし,70%の低床車両でもどうしても客室内に段差が出てまいります.で,なぜそれがヨーロッパでいいのかといいますと,日本の運賃のとり方と違うわけです.日本は必ず運賃を運転手,乗務員に渡すんですが,ヨーロッパではそういうことはございません.それで,70%の低床でもよしとした事ではなかろうかと思います.わが国ではこういうことはできませんので何が何でも100%の低床化が必要であります.これは料金のとり方にあります.それで最初のころ100%低床車を日本で開発できないかということで当時,車両を日本のメーカーや,機器メーカーに依頼をしましたが,日本では残念ながら需要が少なく日本の車両メーカーでは採算が取れないので開発が難しいと断られました.そこでヨーロッパの営業線を走っております数種類の100%の低床車両の内,技術的にも特殊性の少ないドイツの車両を日本のメーカーが設計変更して製作する車両の導入を平成6年(1994年)から検討をはじめて,平成8年(1996年)に車両製造・契約を結んだしだいであります.で,出来上がりましたのが平成9年(1997年7月)運行開始しましたのが同年8月からであります.ここにおいでの何人かの方は熊本にわざわざおいでいただきまして乗車いただいたようですが,皆さんもぜひこの低床電車にお乗りを頂いてこのすばらしさを感じていただきましたら幸いであります.

補助金制度

この熊本市のLRTの特徴としますのは,乗降部の高さがレール面と30cmありまして,電停との差が12cmまで縮まっております.またリフトが装備されておりますので,この12cmの乗降の段差もなくすことができます.したがいまして,車椅子の利用もできるようになりました.また弾性車輪という欧米では標準的に使われておる車輪の使用で低騒音,低振動が実現されております.平成9年度に導入いたしました1次車の購入金額は約2億2000万円であります.同じ車両の長さの在来車に比べますと約4割高めになっております.これにいたしまして交通局が公営企業ということで,今は総務省になっておりますが昔の自治省からバリアフリー促進費用という項目の中で,割り高分についての補助金を頂いて購入をいたしました次第です.また平成11年度に導入しました2次車2編成,平成13年度導入いたしました3次車2編成につきましては,私ども交通局だけではどうしても導入するべく資金がございませんので市の一般会計のほうで経費を負担してもらうという方法を取り,初期投資の年度負担を軽くするために16年間リースとして列車を運行して,これも同様の補助制度を適用いたしております.熊本のLRTの運行本数につきましては,現在は4編成運行の32往復ができる状態でして運行間隔といたしまして約20分の割合になっております.車椅子利用者につきましても,導入前は0でありました.導入後1日平均0.62になり現在では1日平均1.2人にまで増えております.

LRTに関する市民の評価

このLRTに対する市民の評価でございます.大変乗りやすい,乗り心地がいい,このような評価をいただいております.各地からおかげさまで視察も来ていただきました.また平成11年度市内全域3000人を対象に熊本市が実施しました市民意識調査の路面電車に対するアンケートでも約9割の方が低床電車を知っていると答え,9割弱の方がもっと増やして欲しいというふうに思っておられます.その反面低床化のために犠牲になりましたことがあります.それは座席が少なくなったということであります.市電全体の印象としては,市電に愛着を感じる人は市民の75%に登っております.またこの市電を利用する理由として交通渋滞の影響が無く時間が正確であるということ,つまり路線上に自家用車が入って来れませんので,健軍と言う所からだいたい市役所の中心までバスでラッシュ時に入りますと45分ぐらいかかりますが,電車では15分足らずで入ってまいります.そして,料金もバスよりも安い,路線もわかりやすい,運行本数が多いと言うのが市民からの評価であります.市電の路線の新設や延長することにつきましても市民の50%以上,正確には56%だったと思いますが,延伸が必要だと回答しております.

電停の問題と課題

電停の問題につきましては,ただいま交通局のほうで電停の数が35ヶ所でありますが,その内有効幅員が1m以上ある電停は13ヶ所しかありません.その他の停留所は1m未満で最も狭いところで65cmしかないのです.道路との共合の境に安全柵がありますが,一般の人が待っていても恐ろしい状態であります.また横断歩道橋からのアクセスしかできない停留所も2ヶ所あります.また電停のスロープ化につきましてはほとんど完了しているのですが,この停留所の幅というものに現在我々は大変頭を悩ませています.これはやはり車社会,車が中心でありますのでどのように電停の幅を広げさせていただくかが課題であるかと考えます.1度人間は大変便利な乗り物,自動車を手に入れますと,なかなか離したくないのは皆同じような考え方であろうかと思います.車が増える.道路を増やす.また増える.道路を拡張する.このような関係から車をスムーズに流すために市電を「どきなさい,廃止しなさい」廃止してしばらくは車はすいすいと通りましたが,それは1年も経たないうちにまたいっぱいになる.この繰り返しが現在の状態であろうかと思います.

国の動き

つい先だって国土交通省の方の全国大会を熊本市で開かせていただきました時に,路面電車とまちづくりというテーマでシンポジウムがございました.私もパネラーとして参加させていただきましたが,その会の前夜に前夜祭と言うのがありまして,旧建設省の皆さんと懇談の機会がありましたその話の中で,われわれも現在どうするのかを考えているのだと,お名前はちょっと申し上げられませんが,そういう関係からか,旧建設省の方の路面電車をまちづくりにどういかすのかという考えにようやくなり始めたという印象がございました.その会合がありました1週間後にやはり今度は旧運輸省の方で,今まで市電の延長問題について話を聞きたいということでお尋ねしましたら,調査を国の姿勢として考えておられるようで,「調査費用を新年度予算に盛り込みたいのでお話を聞かせて下さい」ということでございました.路面電車については旧建設省にしろ旧運輸省にしろ大変興味を持っていただき今が延伸をするなり,新しい路線を引くチャンスかなとこのように思っております.

市の交通政策

市の交通政策に対する姿勢でありますが,高齢者対策,環境対策ということで最もこの路面電車には注目をし,市長も力を入れておるのが現状であります.平成7年に熊本県と熊本市が共同で立ち上げました共同会議におきまして,この委員会の報告によりますと,鉄軌道の定義,もうひとつはバスの定義という2つのテーマで色々とご意見をいただいております.鉄軌道の定義でづけでありますが,JRの問題であるとか私鉄の問題でもありますが,市電についてお話させていただくならば,その提言の中に市電は低床式に向かった車両の導入,高速性,定時性の確保等を実施し随時グレードアップを図ることが提案されております.低床車の導入は行っておりますがその他,高速性であるとかの他の施策等は実施できないのが現実であります.これらの既存の交通機関との例と共に将来熊本都市圏の拡大を考え直しますと,飛行場でありますとか,駅でありますとか,港でありますとかこういうことを色々考えながら総合交通の方の整備,計画,検討が早急にしなくてはいけない課題であろうと思います.鉄道と市電をどうひくか,それと同時にバスをどう路面電車とうまくからませて市民の足を確保するかということではないでしょうか,電車だけでは完全に網羅できません,従いましてその路面電車を中心にどうバスとやるのか,それが今後の早急なる課題であるかと思います.来年,再来年すぐにでもこれを実施できるような計画を作るのが,われわれの仕事かなと思います.

いろいろな提言の中にも環状型路線,鉄軌道交通との結節が提言されております.熊本は先ほど申し上げたように熊本城の近くに交通センターというターミナルを中心に放射状に出ております.道の状態もせもうございますし,窮屈な曲がり角が大変多くなります.交通局が生き残る道は何なのかということをテーマに考えましたところやはり,市長の姿勢,公約もありますし,少子高齢化を迎えてこの老人,子供たちの足を確保するのは何なのかということだと思います.熊本市は環境都市宣言をすでにさせていただいていまして先ほどの京都会議においても,市でもただ1ヶ所熊本市が参加させていただきました.先ほどちょっとヨーロッパのハイデルベルクの話をしましたが,ハイデルベルク市の市長さんで,ヴェーバー市長さんでありますが,この方ヨーロッパでもかなり有名な環境に対するすばらしい考えのリーダーのお一人でありまして,ハイデルベルクのほうでも国際会議がありましたので,熊本市もそれに参加をさせていただいております.この環境問題,地球温暖化,大気汚染これはヴェーバー市長さんの言葉を借りますならば,「人間は知らず知らずに自分の命を縮めていると,便利さゆえにこのままになってそのあなたの命をこれで縮めていると」そのような表現をされ,またその通りであろうかと思います.

熊本都市圏の交通について公共交通ということで,民営が3社ございます.その中の1社は鉄軌道も持っておりまして,名刺交換をさせていただいたときの話ですが,来年の2月から規制緩和があり,熊本の公営バスの路線を民間バスの方に譲れという意見があがっておりました.そんなにもめている暇は無いと,そんなに市営の路線を譲って一時的に収入をあげても,今の状態から見ますとびっくりするような数字でバスの乗客は減る.市民の皆さんがどうすると公共交通機関を利用するか,乗ってくれるのか,目先ばっかり考えとったんじゃそれこそ結局は50年後にはみんなつぶれている.そして,一番迷惑するのが市民である.このような論法で私も強引にまくし立てましたもんですから今民間がいっせいになって研究をしているとうかがっております.そのおかげで市電を延伸が可能になりつつあります.この市電の延伸をするということはバス会社にとってはマイナスというふうに考えたようでありまして市電に行くお客様を取られるこのように考えたようでありまして,そうじゃないんだ.お互いがこれを連携しながらやっていくんのが一番いいのではないでしょうかということでやってまいりました.

それが市の政策として,平成10年度に作成しました熊本市総合計画の中につけております.平成13年度に出来上がりましたこの計画の基本理念は人にやさしく地球にやさしいというのをあげております.少子高齢化,環境問題をはずしてはだめであろう.このような観点から総合計画を練った次第であります.熊本市の環境面でのお話をさせていただきますなら,CO2の削減に10%目標にされてやっておりますが,なかなかうまくいきません.先ほど申し上げました京都会議にも出席しましたし,ヨーロッパの会議にも出て色々研究をしてきました.で,議会の環境保全局長大変苦戦をしておりました.先ほど枚方市の市長がごみ問題で頭を悩ませているというお話がありましたが,わが市も全くその通りであります.空気がどんどん汚れています.

まあ色々取り留めない話をしてまいりました.参考になったとは自信はございませんが,一つ私がどうしてもこれはと思いますのは,自分の所だけのポジションだけを考えるのではなく全体的にプラス・マイナスを考えてやったほうが何事もいいのではないかと思います.で,延伸の問題でもそうであります.トランジットモールこれを現在わが熊本市でも考えおそらくご案内するかと思いますが,その時に道路空間の再利用ということで実験をしてみたいということで市長も大変乗り気でございます.トランジットモールの研究は熊本市の都市計画部門が行っておりまして,平成12年に優位指揮者等が入って研究会を開いております.場所としましては熊本城のすぐ横の熊本市の中心街でして,デパートやアーケード外の入り口が集まっております.ここは大変交通量の多いところです.けんきゅうかいでは3パターンほど検討しております.自動車を閉め出してバス・電車を走行させる場合,自動車を地下トンネルに入れる場合,自動車とバスを地下トンネルに入れる場合であります.いずれにしても自動車交通を迂回させる道路の拡幅等いろいろな課題が多いので,実現にはかなりな時間がかかると思います.このトランジットモールこれはもう外国では先ほど先生の話にもありました.もう当たり前のようであります.電車が入っている横に椅子が出てそこでコーヒーを飲みながら,そしてお年寄りが自由にそれを使う.事故が無く段差も無いそういう空間であります.それがひいては都市の活性化に繋がると思います.また中心市街が大変寂れてまいりますと,そういう面からぜひこういう実験をすることによって再び市民がこちらの方がいいかなというつまり,意識改革ができるかなというふうに思います.

交通局の新たな取り組み

私ども交通局は上熊本駅のそばに精算事業団の土地を購入しておりましたのでそちらへ電車基地の移転,新築を行っております.今,日夜努力をしていよいよ6月にくらいには工事入札が終わろうかと思います.これができあがりますと,また一つ電車の勢いが出てくるような気がします.市民が支持をしてくれる電車をいかすためには,何が今必要なのか,これを活かすためには路線延伸をしていく必要がある.というふうな観点で今,努力しております.この中の一つにサイドリザーベーション,ご存じのように今道路のセンターを電車が走っているのが日本では通常であります.ヨーロッパでは道の端っこを今,電車が走っています.この実験線を7kmほど作りたいということでこれまた初めてのことだと思うのですが,お金のかかることであります.ただ,横へずらすだけでなんでそんなにかかるんだろうと,おまえ達の設計はむちゃくちゃだと,なにしろ公共団体・市役所の設計は高いんです.民間だと4割くらい安くなると思います.私,以前老人向けのコミュニティーセンターを作ったんですが,これ1億かかったんです.なんでこんなちっぽけなところにそんなにかかるんだろうと,民間の友人の設計させましたら,4000万で出来るって言うじゃないですか,とてもじゃないけど,税金の無駄遣いだということで,調べました.その建設担当の基準はどうなのか,では民間で4000万で出来るのは基準をクリアーしてないのか.その結果,4000万とはいかないものの6000万でできたということで4000万節約できたというお話で今度はおそらく,まだ金額はわかっていないけれども,建設担当がはじき出した民間のやつの4割ぐらい高いのがでてきているのでは、これはいかんと思います。これをいかに削るかと。これは市民の有効な税金の使い道に反すると思います。私帰りまして,まあそのようなことで改善すべきところはどんどん改善しながら,一つ路面電車でもやりたいと思っております.延伸のことについてちょっと若干ふれさせてもらいますけど,電車の線路を引くのに2通りあると思います.1つは住宅がいっぱい張り付いたところに持っていく方法と,全然,ないところに持っていく方法2通りあると思います.私が独断と偏見で―――7路線の延伸,これは新聞でひょっとするとみなさん方の目にもとまったかと思いますが,市議会の中で,物議をかもした結果,7路線に致したのです.そのうちの考え方の一つに大変住宅が張り付いてしまったところに出す路線と,無いところの路線,ない方は電車を引っ張ることによって,それを中心にまちづくりをしていこう.公共施設をどこに作り,住宅をどこに作り,公園をどこに作り,そういうふうな延伸の計画の仕方,これが熊本市で言うなら港の方にそういう用地があるので一つ計画を出しました.なんにも条件を付けずに単純に計算をしたならば,キロあたり17億ぐらいでできるのではないかと思ってます.また一方住宅の張り付いたところに通すとなると警察の方から,てんやわんやのお小言を頂きます.今でさえ,混んでいるのに,なんで電車を通されるのかと,私どもは今のまんまの車の量なんてとてもじゃないけど,そんなとこは通せません.また通したって意味がありません.熊本県でやんややんやと怒られますが,実は今のところ,混んでるところに通すのは3割か4割の車の人が電車に乗り換えてもらうというのが前提なのです.乗り換えて頂けなければ,電車をひいても採算がとれません.3割減る,4割減れば,それだけ道がすくでしょう,環境にも優しくなりますでしょう.みなさん方の交通事故の心配もいらんでしょう.車が減らなければひけません.ひいたなら車が減らなければ赤字でその電車の線路を維持できません.こういう理屈をかれこれもう10ヶ月しゃべってますとだんだんその気になって最近警察の方もおまえの言う理屈もきちんとおおとるねぇと,話も聞こうかと,そうして少しずつ聞いていただけるようになったかなとこれが1つ,それと市民のみなさんも県民のみなさんも議会も少しずつ聞いていただけるようになったかなと,やっぱり一番堅いのが警察であり,道路管理者であります.これはなんとかせんことにはそういう路線の延長はいかないと.しかし先ほどちょっと申し上げました,建設省にしろ運輸省にしろ,今までの道路行政では行かないということは少しずつ,まあ頭の中にはかなり早くから感じておられるのかなと思いますけど,言葉として,出されるようになったと思います.これからも,少しでも環境に優しい路面電車をまちづくり,街の活性化に活かしたいということで進めたいと思います.

大変早口で訳のわからん,いったりきたりの話を聞いていただきました.ありがとうございました.これに懲りずに是非,熊本においで頂き路面電車特にLRTに乗っていただきますと,そのよさがわかると思います.大変ありがとうございました.

写真提供                                  

枚方・LRT研究会 鎌田徹世話人

         平田暁彦世話人

         田畑喜功世話人


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